埼玉県入間郡毛呂山町にある麻原酒造さんへのロングインタビュー。今回は最後の第3回です。

これからの日本酒業界のことや、これまでの日本酒業界のお話を聞かせていただきました。

―先程も、スイスの免税店の話をされていましたが、結構輸出とかもされているんですか?

麻原:沢山ではないですけどね。この前も中国から結構大きい飲食店チェーンの社長さんが来たんですよ。

―その飲食店さんに置かれるんですか?

麻原:いえ、一都九県ってわかりますか?放射能の関係で、一都九県は中国に輸出はできないんですよ。埼玉県もそれに入っててですね(2016年現在、福島県、茨城県、千葉県、群馬県、栃木県、新潟県、東京都、長野県、宮城県、に対する輸出規制のこと。現在緩和されつつはある)。

―それじゃあ、中国の方には持っていけないっていうことですか?

麻原:そうそう。中国で生産を一緒にしないかっていう話だったんですよ。いいよー、って。場所と設備さえあれば、人は出すよっていいましたね(笑)まぁ、前もやろうとしたことはあったんですけど、多分今回もやらないとは思いますね。

―中国産の日本酒ですか?

麻原:いや、中国でも結構いい米があるんですよ。食べても美味しいですし。台湾もそうです。今のところは海外の日本酒はそんなに美味しくないみたいなんですけどね。これからどうなるかは分からないですね。

―海外産の日本酒が、ですか?

麻原:そうそう。韓国なんかは、今はアメリカ産の日本酒がすごく入ってきていて、とにかく安いんですよ。韓国でも造ってますし、今や色んなところが造っているんです。今後は海外との争いになっていくかもしれませんね。

―海外メーカーの日本酒との争いってことですか?

麻原:ええ。まぁ海外産の日本酒を日本酒って呼べるのかは、分からないんですけど。日本としては日本産じゃないと日本酒って呼べないようにはしたいみたいですけど。ただ、これから海外メーカーがいい酒造り出しちゃって、日本に入ってきちゃったらもう金額で勝てないかもしれないですね。200円くらいで純米大吟醸とかになって、それが美味しかったら、もう勝てないかもしれないですよ。

―最近の日本酒ブームみたいものは、もしかしたらいいきかっけになるかもしれませんね。

麻原:確かに日本酒は昔と比べてずっと美味しくなってますよね。はっきり言って、どこの蔵さんも美味しいですから。特に秋田なんかは本当に美味しいですよ。今は秋田がきてますよね。でも、埼玉県が4位なの知ってます?

―えっ、本当ですか?

麻原:そうそう。製造石数は(石とは単位のこと、合、升、斗、石の順番)埼玉の次が秋田なんですよ。1位は兵庫いわゆる灘杜氏で、2位が伏見の京都で月桂冠とかもってるから、3位が新潟で、4位が埼玉で5位が秋田なんだけど、埼玉と秋田の差が凄くつまってきてて、多分あと2年くらいで抜かれるんじゃないかなんて話もあるんですけどね。

―確かに、埼玉に酒どころのイメージは余りないかもしれないですね。

麻原:まぁ、そうですよね。埼玉の人は埼玉のお酒あまり飲まない。っていう話も結構多かったんですけど、最近は少し変わってきてて、県知事さんとか、専門店さん(酒屋)とか、皆さん頑張ってくれて、地酒応援団っていうのをやっていて、昔とは全然違う感じになってきったんです。

―それは凄くいいことですね。

麻原:そうですね。でも、日本酒の消費量自体は、60年位前からずっと下がっているんです。年をとると飲めなくなるし、若い人飲まないし、色々選択肢もあるし。美味しくはなったとは思いますけど、ワインとかビールとかと比べるとどうかっていうことですよ。日本酒の中だけの争いというよりも、アルコール業界全体での争いっていう感じはありますよ。

―アルコール業界での争いですか?

麻原:そうです。例えば、ビールなんかはすごいじゃないですか?大手だったら、スーパーでもどこでも見かけられるし、でもビールも苦戦しているでしょう?人口が減って、飲む人が減って、確実に消費量っていうのは落ちていくでしょう。目に見えるように明らかに減っている。だから、どんどん海外に輸出している。ビール業界もそうなんですよ。ただ、今クラフトビールは凄い伸びてるね。日本酒もだけど。

―麻原酒造さんはビールも造られていますもんね。

麻原:ええ。昔の場合って日本人はビールを飲みたくて飲んでた訳じゃないですか。飲まされていた訳ではなくて、だけどビールが半分以上を占めていた時もあったわけですよね。

―確かにビールはよく飲まれていますね。

麻原:だから多分無理やりビールを飲まされた訳ではなくて、自然と代わって言ったんだと思うんですよ。自分たちの選択肢の中で、圧倒的にビールがよかった。だから、ビールが売れたわけでしょう。日本酒があり、ワインがあり、ハイボールもあり、その選択肢があるじゃないですか。日本酒は日本酒で分かりやすいけど、じゃあ、ハイボールとビールと日本酒、あなたどれ飲むのっていう。ということで、ビールが相当量の占めちゃうわけですよ。僕も確かに1杯目はビールにしちゃうこともあるし。

―確かに、1杯目にビールっていうのは習慣に近いものがありますよね。習慣になっているのって、凄いことですよね。

麻原:そう。でも、今日本酒も、色んな蔵さんで若い人が造ってたり、若い女の子が造ってたりしているのが増えているから、そういうのはすごくいいと思うんです。内でも1人女の子が働いていますよ。そういうふうに、もっと若い人もだけど、ガンガンやっていけば、もっと日本酒も変わっていくのかもしれないですね。

―本日は貴重なお話ありがとうございました。

麻原酒造で働かれている方々

 

皆様、全3回のロングインタビューはいかがでしたでしょうか?

最後の、これからの日本酒業界のお話などは、本当に色々なことを考えさせられました。

社長の麻原さんは、非常にエネルギーに満ち溢れた方で、まさに「エネルギッシュ!」といった印象でした。

麻原酒造のお酒は、正統派のものから変り種まで、本当に種類も味も豊富です。正統派の「琵琶のさヽ波」と、もしかすると日本で一番甘い酒「アクアドルチェ」、イチオシの「武蔵野」はまさにフルーティー&ジューシーといった趣。しかも、そのどれもがコストパフォーマンス良しという、まさに素晴らしいお酒ばかりです。皆様、是非購入して味わってみてください。

 

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