昨年の今頃、私は本坊酒造様への取材と、芋焼酎の勉強のために鹿児島県を訪れていました。
2017年の7月は今年よりは気候が落ち着いていましたが、車で県内を回っていたら、あっというまに腕が焼けたのが印象にのこっています。

さて、最近は日本酒蔵の記事が増えていましたので、今回は振り返りになりますが、昨年の芋焼酎蔵見学の様子をお届けしようかと思います。
見学時の写真ですので、登場する酒蔵はA蔵、B蔵と致します。

まずはA蔵の造りの様子です。

ドラムロール式の洗米機です。芋焼酎造りで米を洗っている理由ですが、焼酎は米麹を原料に加え、熟成させて醪づくり(絞る前の酒)を行うからですね。
これがまた豪快に水を切りまして、稼働音もあわさって迫力があります。

見慣れない機械です。これは製麹棚(三角棚)という設備で、麹菌を米に混ぜ、米麹を生育しているところです。中を覗いてみるとこんな感じ。

もっと近寄ってみると、

芋焼酎の種類で、白麹、黒麹と呼んだりしますが、これが白麹の麹米を生育している様子です(黒麹は色が黒い)。ちなみに泡盛も同様の麹造りを行うのですが、日本酒蔵とは管理の方法がだいぶ異なります。日本酒蔵の場合は、フタやハコで寝かし、麹室に隔離しますね。

さてここで補足ですが、芋焼酎造りの順番を非常に簡単に説明すると、麹造り→1次仕込み→2次仕込み(1次仕込み+芋)→蒸留→貯蔵となりまして、いまは麹造りの写真をご覧いただいています。

こちらが1次仕込みの写真になります。中を覗くと、

先ほどから写真に写っているコードは、温度計です。

大きい酒蔵では、1次仕込みに甕をつかわない場合もあるのですが、A蔵では甕で1次仕込みをしています。ちなみに通常、商品ラベルに記載される甕仕込みは、蒸留後のお酒を甕で寝かせるという意味です。

ここで蔵元のこぼれ話ですが、焼酎の表示に、「麹米(国産)」等と書かれてまして、国産のお米の方が高級なイメージがあります。ですが、出来上がりの焼酎の味わい、風味を考えると、実はタイ米の方が良いのではないかという見解があります。

A蔵では国産米を使用していますが、業界内外で評判の高い酒蔵でも、原料米は国産米、タイ米の両方があります。私のレベルでは違いに気づけないのですが、興味を持った方はぜひ飲み比べをしてみてください。

研究の結果のタイ米使用ですから、タイ米使用蔵はそのことを隠していませんし、前述のとおり、非常に有名な酒蔵もタイ米使用ですから、「(国産)」の表記のないものを3種類飲めば、1つ位はタイ米使用のものに当たることでしょう。

こちらは蒸留器になります。

この後、通常の貯醸、甕貯蔵、樽貯蔵とわかれていきます。

あくまでA蔵とは関係ありませんが、「紫尾の露」というお酒は、甕貯蔵の通常品と、更に石蔵で貯蔵した限定品ヴァージョンがあるので、今度飲み較べてみたいですね。

さて、つづいてB蔵に参ります。B蔵では、私がお邪魔する時間の作業はないということで、営業部長の方に設備を見学させていただきました。
営業部長も午前中は造り作業をした後に通常業務へ移るということで、「体力的にキツいんだヨ」とのこと。

撮影した写真から、見慣れない機械をピックアップしてみました。

上の箱から何かが出てくる機械です。

管になっている部分。
これは芋の皮むき機ですね。更に次の機械へ。

芋を砕く機械です。工場内は暑く、やや駆け足で撮影を続けます。

こちらは三角棚ですね。B蔵ではタイ米を使用しているとのことで、後日A蔵とB蔵の飲み比べをしたのですが、どちらも旨かったです。風味の違いはありましたが、絶対に他の要因の影響の方が大きく、分かりっこないのでは……。

また、写真の右に、白いカーリングのストーンのような蓋がありますが、これは階下へとつながっており、モノの移動を建物の上から下へ、省エネルギーで運ぶ工夫です。

昔から遣われてきた酒蔵は一階のスペースで、モノが平面移動するケースが多いですが、建て直しや新しく建てて場合、こういった工夫がたまに見られます。

ラベルを張る機械です。首の部分のラベルは手作業で張っていきます。作業員のALOHAなシャツはお揃いの公式グッズですね。夏の焼酎、ロックが旨い。

おわりに

今回は普段と勝手の違った振り返り記事になりましたが、いかがでしたでしょうか?

お読みいただければ察せられる通り、今回の裏テーマは麹米についてだったのですが、ちょっとおもしろい点を整理します。

・醸造酒の日本酒蔵にくらべ、蒸留酒の焼酎、泡盛の麹米の造り方は大胆。

・芋焼酎の米麹には国産米とタイ米の2種類がある。

この知識を得たところで、何を得するわけでもない、まさにトリビアといったところです。
次回からはまた、通常の更新に戻る予定ですので、【酒蔵へ行こう】、もしくは【酒屋へ行こう】を引き続きお楽しみください。それでは、また。

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