日本酒を楽しんでみよう

蔵人や酒屋さんとお話ししていると、若い人はビールや酎ハイがメインで、日本酒をわざわざチョイスする機会がないよねえ、とか、SNSを経由して、わざわざネットで検索してうちの酒屋に来てくれた20代前半のお客さんがいて、嬉しかったなあ。といった、若い人に日本酒を飲んで欲しいねえ、という話になりがちです。
この酒屋さんの場合では、お酒を全然知らない人でも、用途に合わせて気軽に選んでもらえるという評判をみて、お客さんが来てくれたそうです。

お酒を造る人も、売る人も、若い人に対する日本酒のハードルの高さを感じているなかで、私にもなにかお手伝いできればということで、
今回、自宅で4,5人の鍋パーティをする際、絶対に外さない日本酒の楽しみ方をお伝えします。

日本酒の楽しみ方

日本酒の賞味期限、保存方法

4,5人のパーティであれば、4合瓶(720ml)の一本は空くと思われますが、1升瓶(1800ml)だと怪しいかもしれません。また、いろんな種類のお酒を楽しもうと、4合瓶を2,3本購入した場合、全部飲み切るのはむずかしいでしょう。

結論から言えば、日本酒に賞味期限はありません。

ただし、一度開栓した日本酒は、空気に触れて、刻一刻と変質していきます。
特に気を付けないといけないのが、「生酒」と書かれているお酒で、他のお酒に比べ、変質が早いので要注意です。

日本酒は生き物ですから、お酒によって、開栓後数日たった方が美味しいお酒も多いですし、酸っぱく劣化してしまうのが早いお酒もあります。この点はお酒を購入する際に、お店の人に確認することをおすすめします。

あくまで私個人の感覚ですが、お酒は4合瓶の場合、開栓後2週間、生酒は1週間程度で飲み切るようにすると安心です。
1升瓶のお酒で、なおかつお店でしっかりと保管されているお酒は、もっと長い期間おかれていても、かえって味わいが豊かになることもあるのが日本酒の奥深いところです。

お家で日本酒を保存する際には、しっかり栓をして冷蔵庫へ。日本酒は光にあたることでも劣化しますから、部屋の中に置きっぱなしにしてはいけません。

日本酒初心者におすすめの種類

日本酒には、大吟醸酒、吟醸酒、純米酒、本醸造酒、特別酒……と沢山の種類がありますが、最初におすすめしたいのは純米吟醸酒です。
なぜなら、純米吟醸酒はいま、多くの酒蔵さんが力を入れて開発しているお酒であり、美味しさと値段のバランスが非常に良いことが挙げられます。

他には、(純米)大吟醸酒は飲みやすく、美味しいお酒が多いのですが、贈答品として重宝されていることもあり、すこーしお高いです。特別な日に飲みたいお酒ですね。

お水を忘れずに!

日本酒にあわせてお水を用意しましょう。氷をいれない水がおすすめです。江戸時代には、日本酒と一緒に飲む水のことを「和らぎ水」(やわらぎみず)と呼び、翌日に酔いを残さない生活の知恵になります。
ウイスキーなど、アルコール度数の高いお酒はチェイサー(水)と一緒に楽しむことが多いですが、もちろん日本酒の場合にも和らぎ水を挟むことで、口がすっきりしてお酒の味わいが楽しめます
お酒に不慣れなうちは多めにお水を飲むのがおすすめですし、酒好きの人でも、日本酒とほぼ同量の水を飲む人も増えています。

酒蔵さんのなかには、お酒を仕込む際の仕込み水を販売しているところもありますから、お酒にあわせて仕込み水をえらぶ、コアな楽しみ方もあります。

お鍋(食事)にあわせてお酒を選ぼう

食べ合わせの目安

日本酒には香りの強弱、味わいの強弱によって、抜群の食べ合わせになることもあれば、非常に残念な事態に陥ってしまうこともあります。
日本酒の販売・提供資格である「唎酒師」(ききざけし)を運営・管理している、日本酒サービス研究会・酒匠研究連合会(S・S・I)では、そうした食べ合わせの基準になる分類として、4つのタイプ分類を提案しています。

このタイプ分類はあくまで目安であり、販売されている日本酒が既に分類されているわけではありません。飲む人によって、評価が変わる場合もあります。
とはいえ、お酒を選ぶ際の目安にはなりますので、例えば酒屋さんに、「魚介の寄せ鍋にあわせて、爽酒タイプのお酒を探しています」と一言伝えるとスムーズです。

食前に軽く乾杯

薫酒、またはスパークリング日本酒がおすすめ。

今は驚くほど華やかな日本酒が続々と販売されていまして、あっさりした前菜や、酸味のある食事、例えば酢の物との相性が良いです。薫酒は食前酒として、乾杯用のお酒として最適です。
「蔵こん」登録のお酒で例えればこちら。

天吹 純米大吟醸 りんご酵母

あっさりした鍋料理

爽酒がおすすめ。

爽酒には、食中酒を意識して造られたものも多く、香り、味わいともに抑えめで、非常に多くの食事との相性が良いです。お酒単体の主張を抑え、キレ良く口の中を整えてくれるもの、ほのかな米の旨味を醸し、食事の充足感を高めてくれるものなど、多くのタイプがあります。

例えばこちら。

上善如水 純米吟醸

味噌、キムチのようなしっかりした鍋料理

醇酒がおすすめ。

醇酒は、米、こうじ由来の穀物系のふくらみのある香りと、強めの旨味が特徴的です。お燗をつけて(温めて)飲むと、香りと味わいが一層豊かに広がり、心を落ち着かせる効果が高いものが多いです。ただし、美味しいお燗にはコツが必要なことと、人によっては豊かな香りに含まれるアルコール香を苦手に感じる場合がありますので、日本酒に不慣れなパーティの際には避けた方が無難かもしれません。

例えばこちら。

姿 純米吟醸 無濾過生原酒 雄町

デザート、食後の嗜好品

今回、食べ合わせで扱わなかった熟酒ですが、こちらは日本酒の中でも嗜好性の高い逸品が多いです。長めの熟成期間を経て濃厚なものや、癖の強いお酒が多く、日本酒の入り口としてはおすすめできません。貯蔵期間がある分、お値段も少し高くなる傾向があります。
とはいえ、なかには癖が弱くて美味しさが引き立つ熟酒もありますので、興味が高まってきたら一番意外な発見があるかもしれません。

意外に飲みやすかった例。

長期熟成 三年古酒 喜三郎「琥珀色の雨」

まとめ

いかがでしたでしょうか?
極論をすると、絶対外さない日本酒選びの方法は、

1、食事を決める。
2、酒屋さんに、食事を伝えたうえで、日本酒のおすすめを聞く。

もしくは、

1、気になったお酒を選ぶ。
2、酒屋さん、もしくは「蔵こん」で、そのお酒に合った料理を聞く。

となります。
どっちにしろ、誰かに聞く必要があるのかとずっこけてしまいますが、例えば話題の日本酒を耳にした場合、4分類法を覚えておくと、そのお酒のタイプにあわせ、おのずから、こういう料理に相性が良く、こういう料理に相性が良くないかも、というイメージをもてるようになります。
最近は飲食店でも、日本酒のメニュー表に4分類法とあわせて記載してあるケースも増えていますから、もし見かけたら、ぜひ一度食べ合わせに注意してオーダーしてみてください。

1人でも多くの人にお酒の魅力が伝わり、生活がちょっとでも楽しくなるようにと祈っております。

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