【酒蔵へ行こう】追跡!長野の酒メッセ(後編)【姨捨正宗/佐久の花/澤の花】

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2018年5月9日「長野の酒メッセin東京」に端を発し、一週間かけて長野県の酒蔵を巡ろうじゃないか、という勢い任せの長野紀行、後編です。

前編はこちら

信州善光寺仲見世通り

後編では、長野県の東のエリア(上田エリア、佐久エリア)にお邪魔します。

後編のトップバッターはこの酒蔵です!

長野銘醸

しなの鉄道「屋代駅」より車で15分、JR篠ノ井「姨捨駅」より車で10分。

千曲市にあります「長野銘醸」にやってきました。歴史ある建物が残されており、まるで映画の世界に迷い込んだような趣のある酒蔵です。

長野酒メッセでの一枚。「風神雷神」は県外向けの銘柄です

内田社長にお話を伺いました。

―長野のお酒、「長野銘醸」のお酒について

県のお酒について、一言で話すのは難しいですね。ウチの話をしましょう(笑)。
私は雇われ社長の立場でして、現15代当主の和田代表がお医者さんをやっています。
その仕事柄もあって、より体に優しいお酒を目指そうということで、平成19年にお酒をぜんぶ純米酒に切り替えて、いわゆる純米蔵になりました。

いまほど純米酒が注目される前のことですから、流行るという見込みがあったわけではないですし、当時、価格を上げないで切り替えたものですから、いまも蔵としてはコスト増をひきずっています(笑)。お客さんにとってはお手頃価格ですね。

―とても歴史を感じる酒蔵ですね

そうですね。だから維持に手がかかる(笑)。善光寺道名所図絵に描かれた、市の保存樹木に指定されている松も、メンテナンスが大変だし、表の煙突の「ヲバステ」の塗装も、カタカナがハイカラな頃、「オ」を「ヲ」と表記した時代のものですね。

良い枝ぶりですね(樹はわからない)

―伝統の銘柄と、おススメの銘柄について

ウチで一番歴史があるのは「純米 オバステ正宗」。いまだと純米になりましたが、一番「長野銘醸」を支えてくれた酒ですね。

内田社長とオバステ正宗

おススメの銘柄は「特別純米 棚田」か「純米吟醸 月の都」……。
うーん(悩みながら)、「特別純米 棚田」だね。

棚田と月のシリーズはどちらもおススメでしてね、松尾芭蕉に「更科紀行」という著作がありますよね。そのなかで、いまの姨捨駅のあたりからの眺めについて賞賛されています。

ちょっと高い位置にある名所でして、見下ろす棚田の眺め、夜、段々の水面に映る無数の月。
という景色ですから、私どももその名を冠するわけだから、とても気合をいれてつくっています。

内田社長、ありがとうございました。

この日は自動車を利用しましたので、お酒は後日に楽しみました。

純米 オバステ正宗」。純米酒とは思えないお手頃価格なのはインタビューのなかで触れたとおりですが、肝心なのは味わい。
実際に味わってみると、お米の磨きが少なめだからか、穀物の香りが強めにあります。これは初心者には厳しいかな?と思いつつ口に含むと、驚くほど旨い。しかも、まろやか。
醤油、塩、漬物を軸に、主役として延々飲めるお酒ですね。

さて、駆け足になり名残惜しいのですが、つづいて佐久エリアに参ります。

ですがその前に、補足として、実際に私が足を運んだ印象について述べておきたいと思います。

酒蔵巡りをする場合、酒蔵がエリア分けされていることで、行程を立てる際に便利さがあります。また、歴史的、行政的にも酒蔵がエリア分けされていることのメリットは想像ができます。ただし、お酒の造り、味わいに関して、はっきりとエリアごとの傾向があるわけではありません。

便宜上、北、西、東とエリアを分けて移動してきましたが、同じエリアに属する酒蔵でも、個性がはっきりと異なることが多いです。それでも似ているような気がする、とか、この地域の昔は、こういうお酒が多かったのかな、と想像するのは楽しいですね。

それでは佐久に戻りまして。

佐久の花酒造

佐久市にあります「佐久の花酒造」にやってきました。手前は酒米の水田だそうです。

髙橋社長にお話をうかがいました。

長野の酒メッセでの一枚。写真は社員の方

髙橋社長曰く、こういったイベントには積極的に蔵人を送り出しているとのこと。なぜなら、

お客さんに喜んでもらえるお酒を目指すには、酒造りの工夫に加えて、蔵人の力を上乗せしないといけない。そのためには直接、お客さんの反応から刺激を受けて、みんなで一緒に取り組まないとね。

と考えているからです。

古風で立派なお家ですが、戦時中の米不足の時期には酒造りを辞めなくてはならなかったそうです

戦後、昭和30年に酒造りを復活できたのは良いけれど、地元のお客さんは他の酒蔵のお酒を飲むようになっているため、先代に付き添って、東京へも営業に出ていました。

貧しい時代、カストリ焼酎など、安いお酒を飲んでいたお客さんが、たまの贅沢で日本酒を飲み、喜んでくれた光景が強く印象に残っているそうです。

昭和30年に「佐久の花酒造」に改名する以前の、「髙橋酒造店」の文字が入ったガラス。戦前のもの

―長野県のお酒のイメージについて

長野県のイメージはバラバラですね。長野県は大きく4つのかたまりが合わさって1つの件ですから、例えば佐久地域についてはわかりますが、他のエリアは他県と同じくらい遠い気がします。

昔の佐久の酒は味があって旨い、やぼったさが感じられていたかなと思いますね。印象では。

―佐久の花酒造について

自分が25年くらいに蔵に帰ってきたときには、県内でも佐久の花酒造は知られてなかったと思います。県内に酒造数が多いですしね(約80軒)。造っていたお酒は、まあ、さきに挙げたイメージ通りの。

そこで、今はもう亡くなってしまったのですが、県の酒検場の先生から教わって、ひとごこちをつかって勉強を重ねました。その先生が、飲んで旨い酒を造りましょうという先生で、米の力を最大限引き出すような、完熟醪(かんじゅくもろみ:造語)という言葉で先生は表現されていましたが、そういった方針で造っています。

実際、米の余り粕が出る量が、うちは少ないですね。

佐久の花酒造から少し離れたところに直売店があります。

いまは東京で「佐久の花」ラベルを見かけることが増えましたが、売れ始めた時のお酒のイメージで、「佐久の花」といえば、純米の生という傾向がありますね。

髙橋社長としては、酒好きの裾野が広がることが、なにより酒業界に良い影響をもたらしてくれると考えるため、安いお酒は安いお酒で、普段の晩酌用のお酒こそキチンと造るのが大事だと考えているそうです。鑑評会に挑戦する技術のフィードバックは大きく、普段用のお酒にまでキチンと還元しています。

 

なるほど、と晩酌用のお話を受けて、後日、晩酌用の「佐久の花」2種を飲んでみました。

ひとつは生酒らしく、フレッシュ感、強さを感じさせつつ、重すぎない。火入れのものは生酒に比べて大人しいながら、そのぶん辛さが感じられる食中酒といった具合。

いずれも「佐久の花」の上位のお酒に比べて華やかさを抑えながらも、旨味があるお酒でした。私はまだまだ飲んだお酒の種類が少なく、また、どうしても飲むものが中位の価格帯のものになりますが、最近は晩酌用のお酒に魅力を感じています。

自分にとってのご褒美としてでなく、日常としてお酒を楽しむ際に、美味しい晩酌用のお酒が増えているのは、ある種の豊かさを感じますね。

 

伴野酒造

名残惜しくも、長野出張の最後に、佐久市「伴野酒造」を訪れました。

この日は、蔵が工事中につき、直売所に設けた仮事務所にて、伴野貴之常務 兼 杜氏にお話をうかがいました。

―長野の酒のイメージ

伴野酒造は長野の酒っぽくないねと言われることが多いですね。
長野県は山に囲まれている県なので、海沿いの件に比べると、海のある県の方がこざっぱりしているかな?山は山で保存食がメインですから、味が若干濃いかな?

うーん、結局、長野県も、佐久も、どちらもメーカーが多いので、統一的なイメージはないですね。
私としては、一括りにされたくない、というこだわりもありますけどね(笑)

―伴野酒造の酒造りについて

いま目指しているところ。その蔵がどうしたいのか。

そうした自問自答が原点ですね。

うちの蔵は「澤の花」が創業当時からの銘柄なので、大切にしたいなという思いがあります。信州佐久の清流に咲く花、「あやめ」を象徴にしていまして、100年以上この名前でやってきました。

長野の酒メッセでの一枚。澤の花があやめをイメージしているとは知らなかった

自分は酒が弱いのですが、自然体の酒が好きです。清らかな酒、酒に弱い自分でも、もうちょっとのみたいな、となる酒。加えて、地酒、地の酒として自問自答します。

地酒って誰のためのもの?

地元の人のためでもあるし、地元を離れて各地に散っていった人に、その地で、地元の酒を飲んで、喜んでもらいたい。
ノスタルジックな気持ちで飲んでもらう酒は、オール地元産の酒が良いなと。

昔は自分も故郷とか、好きではなかったですが、年を取ると大切なものだと思いますしね。

お酒をもった写真をお願いすると、今日はぼさぼさだから腕だけね。

目指す方向としては、長野県の酒米100%で「澤の花」をつくり、各地に勝負していきたい。名前の由来も背負ってね。

自分で経営と造りの両方をやっていますが、経営に偏った冷静な気持ちだけなく、造る意味とか、想いを込めて取り組む。一個のブランドで、地元でも東京でも勝負できるスタイル、今までのものを背負って、変えていくというのが、自分なりの挑戦スタイルですね。

―いま、イチオシのお酒を挙げるとしたら

純米吟醸の季節酒のシリーズですね。同じ米で造っていて、造りの工程を変え、季節を4種類演出したいと考えています。

コンセプトが良く表れたお酒が良いなと考えています。見た目も含めてですね。

自分はあまり社交的でない、絡みづらいところがある人間ですが(笑)、四六時中、酒について自問自答して取り組んでいます。不器用なので、10年以上たって、最近やっと、少しだけ楽に酒を造れるようになりましたね。

伴野常務、ありがとうございました。

お話を受けて、後日、「澤の花 ひまり」を飲んでみました。

「ひまり」というネーミングから想像されるのは「夏酒」ですが、実はこの「澤の花 ひまり」は通年のお酒。口に含むと、爽やかな酸、穏やかめな味わいです。夏というよりは、やはり穏やかな陽光でしょうか。切れ味もよく。

和食と合わせるといいなと感じます。コストパフォーマンスも良好ですね。爽やかな酸のおかげか、いくら飲んでも飲み飽きしないタイプの日本酒と言えると思います。

ぜひ、お試しください。

 

さて、これにて「追跡!長野の酒メッセ」は終了となります。

実は今回、長野県の南のエリアが手付かずになってしまいました。

このままでは物足りない、と再訪を考えております。時期は未定ですが、もしご興味のあるコメント等ありましたら再訪が早まります。

また、「蔵こん」では他にも、〇県の情報を厚くして!等、リクエストをお待ちしております。

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