今回は、埼玉県入間郡毛呂山町にある、麻原酒造に取材に伺わせて頂きました。
麻原酒造は、日本酒だけではなく、リキュールやワイン、ビール等も作られている少し普通の蔵元さんとは違った蔵元さんです。とはいえ、本業の日本酒の方も個性的な変り種から、正統派でコスパ抜群の美味い酒まで、色々な酒造りをされています。
代表取締役の麻原健一さんには、インタビュー中に、日本酒造りのことや、これからの日本酒業界のこと、麻原酒造さんの歴史など、本当に様々なお話を聞かせていただきました。
全3回にわたるロングインタビューですが、是非お楽しみください。
インタビューに答える麻原社長
―よろしくお願いします。早速ですけど、今イチオシの日本酒があるんですか?
麻原:よろしく。ええ、「武蔵野」っていう銘柄なんだけど。
―「武蔵野」ですか?
麻原:そうそう。ダイヤモンド4って呼んでるやつなんですけど、ブラックとホワイト、純米吟醸と純米大吟醸があって、これは去年あたりから出してるんですけど、黒い方は埼玉山田錦、このお米っていうのは、多分今はうちしか持ってないと思いますよ。
―埼玉の山田錦ってことでしょうか?
麻原:そう。で、去年あたりから造り始めたんです。これは、私の感想なんですけど、兵庫の山田錦もずーっとやってきましたけど、少しうちのとは難しい様な印象なんですよ。だから、埼玉の山田錦を作ってもらったら、めちゃくちゃ美味いんですよ。その土地でとれた、その土地の水で育った米、やっぱりその方が、その土地の水で造る訳だから合うのかもしれないですね。
―なるほど。ちなみに、ホワイトの方は?
麻原:ホワイトの方は、埼玉さけ武蔵というお米なんですけど、ご存知ですか?埼玉県の酒造好適米ですよ。これも、今は比較的量が少ないんですけどね。
―確かに、余り聞かない名前かもしれないですね。
麻原:それはですね、売れてるからじゃなくて、作る人がいなくなってきているからなんです。でも、これもうちの酵母にあうんですよね。ジューシー&フルーティーっていう感じですね。
写真は埼玉さけ武蔵
―なるほど。確かに、ジューシーでフルーティーですね。
麻原:両方とも純米原酒で仕上げています、これが私のイチオシですね。
―ありがとうございます。本当、美味しいですね。
麻原:一応、今メインは海外の免税店に卸してますからね。結構大きいスイスの会社さんで、今はマカオの方とかに行ってるみたいですね。でも、うちはこれからこのダイヤモンド4の「武蔵野」でいくかなっと。あと、面白いのはアクアドルチェっていううちが造っている酒があるんですけど、これが多分日本で一番甘い酒ですね。日本酒度-63ですよ。
―そんな数字がでるんですね!
麻原:出ちゃったんですよー。ただ、そんなにベタ甘な訳じゃないんですよ。麹の甘さが際立ってるだけで、このアクアドルチェは結構人気がありますよ。去年は、日本酒度-30代だったんですけど、今年は-60代になりましたね。アルコール8%の純米原酒です。
―そんなにベタベタしてなくて、あっさりしている印象はありますけど、やっぱり甘いですね。少し、ジュースみたいな。
麻原:ええ。だから、柑橘系ちょっと垂らして飲むと、すごく美味しいですよ。こういうの結構昔から、というか、私が造り始めてから、こういうのを造るようになりましたね。ちょっと、きわものっていうかね。もう、凄いガス圧の天然発泡とか、15、6年前からやってましたから。回旋するとプッシュー、ビリビリビリって(笑)これ爆発するんじゃねーかなって。
―ちなみにですけど、「武蔵野」は生酒ですか?
麻原:いえ、火入れですよ。今、輸出が増えてるんで、そうなるとどうしても火入れしていないとだめなんですよ。まぁ、輸出ってそういうもんですよね。
火入れ・瓶詰の最中
―ちょっとここの検査室で酵母を見させてもらったんですけど、なんか独自に開発というか、改良みたいなことをされているんですか?
麻原:そうですね。色々、あそこで酵母培養して、新潟送ったり(麻原酒造さんは新潟にある高橋酒造という蔵も経営されている)、毛呂(麻原酒造の醸造所)の方に送ったりはしてますね。
―「琵琶のさヽ波」の価格設定ってすごいじゃないですか?非常にお買い求めしやすいっていう。
麻原:そうですね。やっぱり、コストパフォーマンスがいいっていうのが、最後には生き残るんじゃないか、と思っているんですよ。
―いや、本当に初めて見たとき、本当に驚きでした。
麻原:いやいや、驚くのは「武蔵野」ですよ!(笑)これは、はっきり言って、純米吟醸、純米大吟醸、両方とも山田錦なんだけど、タンク1本分しか作ってないんですよ。で、こっちのさけ武蔵も1本分だけ。だから、本当に瓶で言うと何千本単位でしかない。埼玉さけ武蔵の方は、ジューシー&フルーティーって感じです。こっちの、山田錦の方は、少し微炭酸なんで、プチプチしてますね。
―最近、微炭酸の増えましたよね。
麻原:うちは、20年くらい前から、ずっとやってますね。うちは、うちの親父の頃からオーナー杜氏だったので、日本でも、自分たちで作るっていうのは早かったと思いますね。金がなかったんで。
―杜氏はかなりコストがかかるっていいますよね。
麻原:昔はそうですね。本当、月に100万位の頃もありましたよ。で、当時私は女房と子供が1人ずつで、13万。で、後から聞いたら、うちの親父は8万だったっていう。杜氏は100万、で、蔵人は高くないですよ。まぁ、杜氏も今はそんなに高くないですけど。一時足らない時に、ね。親父と同い年の杜氏さんがずっと来てたんだけど、俺がいなきゃ酒造りできないだろ、みたいな感じで、もう掃除とかもしないんですよ。周り炭だらけなのに、帰っちゃうんですよ。で、こんなのに金払ってもしょうがないから、だめになるかもしれないけど、自分たちでやっていこうって、そうなってからよくなってきましたね。親父は蔵の中と設備とかにも思いついたことを書いちゃう人だったけど、多分、失敗が許されない状況だったからでしょうね
社長のお父様が設備に書き込んだ後
いかがでしたでしょうか?次回の第2回は、麻原さんの酒造りに対する考えなどについてです。
個人的な感想ですが、ダイヤモンド4の「武蔵野」は、鋭い味のフルーティーさが印象的なお酒でした。非常に美味しいお酒ですので、皆様も是非お試しください。
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