酒蔵の情報と現在オススメの日本酒を聞き、それを実際に味わってみる企画【日本酒を飲もう】。

今回は、茨城県に根をおろす竹村酒造店の、竹村亥一郎さんにお話をうかがってきました。

 

竹村酒造店について

 

竹村酒造店は、元は滋賀県の近江商人の出だったといいます。初めは現在の常総市石下に本店を置いていて、水海道・藤代・大阪など数か所に支店があったそうです。

それが天狗党騒動(1864年に起きた水戸藩の藩士による尊王攘夷運動)の折に、本店の蔵が2度の襲撃に遭ったため、危険を感じた番頭が店を閉め、その後水海道(日野屋)に醸造蔵を移して、現在に至っているとのことでした。

 

文化人との交流

京の夢 上撰

もともとが近江商人であった竹村酒造の先祖に、京都で能の鼓の指導をしていた方がいらっしゃいました。そういったご縁の中で先代の茂八郎と谷崎潤一郎との出会いがあり、そこから谷崎潤一郎氏の随筆「京の夢 大阪の夢」よりお名前をいただき、竹村酒造店の代表銘柄、「京の夢」が誕生しました。ラベルの絵は、「京の夢 大阪の夢」初版本の表紙と同じ京都の古地図。

 

また、酒好きで知られる井伏鱒二とも交流があり、時々蔵にも来ることもあったとのことです。

その書がこちら。

 

そんな、井伏鱒二や谷崎潤一郎とも親交があった竹村酒造店さんがオススメしてくれた日本酒がコチラ。

京の夢 上澄 本醸造(春限定)

最近では、無濾過生原酒のお酒も多々見かけるようになりましたが、竹村酒造店では昭和30年頃より生原を販売していたので、歴史も長く、味の仕上がりには自信がありますとのことでした。

 

アルコール度数の高くなる無濾過生原酒は、味わいが重くなりすぎる傾向があり、一口目は良いとしても、二口、三口と飲みやすいお酒にならない。だから、通常の普通酒より少なくして、ごく少量のアルコール添加をすることでキリッと飲みやすく仕上げています。

とはいえ、現状、お酒の世界では純米ブームが続いているので、ごく少量であっても、アルコールを添加してしまうと本醸造表記になってしまうんです。だから、「なんでアル添したの?」と聞かれてしまうのが悩みなんですよ。とのことでした。

 

テイスティング 開栓初日

ということで、筆者がテイスティング。

 

口開けです。

香りはやや弱め。

口当たりは、濃厚。キリっとした鮮烈な甘さと酸味が口一杯に広がります。

切れ味はよく、軽やか。一度切れた後に、甘みと酸味が残ります。

注いでから、やや時間を置いてお酒の温度を変化させてみます(生酒なので常温保存できません)。お酒の温度を常温位にしてみると、より味の輪郭がハッキリします。もしかすると、単純にお酒が空気に触れて開いただけかもしれませんが、全ての味が一段階上がったような印象になりました。温度帯は、花冷え(10度)、涼冷え(15度)辺りが適温でしょう。

この「京の夢 上澄 本醸造」に関しては、未だ四合瓶が若干残っております。皆様も是非この期に楽しんでみては?

 

こぼれ話

本醸造から主成分の表記の話になり、今回の記事とは趣旨が違ったので、掲載は避けましたが、面白いお話だったので、記載させて頂きました。

現在は表記のルールが厳格化していて、精米の違うお酒のタンクをブレンドすると、表記上、ランクの低いものにあわせた表記をしなくてはならなくなるんです。比喩にはなってしまうけど、今の流行ってようは、シングルモルトでしょう。シングルモルトはシングルモルトの良さがあるけど、ブレンデットには、ブレンデットの良さもある。だけど、今はブレンドしにくくなってるから、ブレンデットの技術を研究し難い環境になっているんです。そういった意味では、こういった環境が続いていくと日本酒をブレンドする技術は培われていかないかもしれません。

 

表記の厳格化は割と好意的に眺めていましたが、弊害もあるのだなー。と、考えてしまいました。今回は、貴重なお話ありがとうございました。

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