奄美黒糖焼酎ってなに?

奄美黒糖焼酎とは?

 

黒糖焼酎と聞くと、どんなことを思い浮かべるでしょうか?

 

黒糖で造ったお酒、香りがいい、中には糖分が多そうなんて考えている人もいるかもしれませんし、もしかするとそれ何?という人もいるのかもしれません。実際にそういった黒糖焼酎を全く知らない人とも出会ったことはあります。

そんな黒糖焼酎ですが、実は歴史は長くありません。

焼酎の造られ始めた年代自体が余りハッキリとは分かっていないというのもあります(詳しくはコチラ)。現在は代表的な焼酎といえば、「芋焼酎」を思い浮かべる人も多いでしょう。でも、芋焼酎自体も歴史はそう古ありません。芋焼酎は明治維新の頃に造られはじめたものです。

そんな明治時代に、泡盛の造り方が沖縄から奄美に伝わります。その頃の奄美では、自家製造も盛んだったと言われています。

時代が下り、第二次世界大戦後の米軍統治下の頃に、不足する米の代わりに(そもそも奄美ではお米があまりとれないのです)、黒糖を溶かして入れるようになり、今の黒糖焼酎の原型が出来上がったのでした。

写真は戦後の西平酒造 米軍占領下ではビールも造っていた

昭和28年の12月、奄美群島が日本に復帰する際に、この功績が配慮されました。ゆえに、日本の酒税法の特例通達で、黒糖焼酎は奄美大島でのみその造りを認められるようになりました。ですから、黒糖焼酎は「奄美黒糖焼酎」というのが、本名なのです。

さて、ここまでざっと黒糖焼酎の歴史を見てきましたが、次は、黒糖焼酎の造りについてみていきたいと思います。今回の記事を通して、一人でも多くの人が奄美黒糖焼酎に興味を持ち、飲んで楽しんでもらえたらと思っています。

 

黒糖焼酎の造り

まず、はじめに焼酎には主に2種類の製法があります。「連続式蒸留焼酎」(甲類焼酎)と「単式蒸留焼酎」(乙類焼酎)の2つです。サワー等によく使われるのが、「連続式蒸留焼酎」(甲類焼酎)です。いわゆる、「本格焼酎」と呼ばれるものが「単式蒸留焼酎」(乙類焼酎)とよく言われます。ですが、正確に言うと「単式蒸留焼酎」(乙類焼酎)の中で、砂糖などの添加物が一切含まれていないものが、「本格焼酎」ということになります。

もちろん、今回扱う黒糖焼酎は後者の「単式蒸留焼酎」(乙類焼酎)に砂糖や添加物が一切含まれていない「本格焼酎」です。

 

それでは、黒糖焼酎ができるまでを順を追って見ていきたいと思います。

一次仕込みまで

1、最初は、いわゆる洗米、そして、蒸米を行います。原料米を洗米・水に漬けて浸漬(しんせき、液体に浸すことを指します)させ、水を切って蒸ます。

写真は町田酒造の浸漬

2、製掬(せいきく)という工程を行います。先程のお米に麹菌を散布し、35度~40度程度に保ち40時間から45時間程度熟成させるといわゆる麹菌が出来上がります。焼酎では非常に重要な、黄麹・黒麹・白麹は、この時に造られます。ちなみに、日本酒は殆どの場合が黄麹です。ですが、黄麹は暑さに弱いため、暖かい所で造っている焼酎は暑さに強い黒麹・白麹を使うのが一般的です。麹の歴史に関してはコチラをご覧ください。

 

写真は白麹

3、次の工程がいわゆる一次仕込みと呼ばれるものです。熟成した麹に水を加えて5日~7日すると、発酵して醪(もろみ)ができあがります。

写真は富田酒造の甕壺での一次仕込み

4、次が、黒糖焼酎を黒糖焼酎たらしめる黒糖を蒸気で溶かし、黒糖液にしていく工程を行います。なお、あらかじめ黒糖を溶かした黒糖液を使うことは、黒糖焼酎を造る際には酒税上、許されておりません。黒糖焼酎を造る際は、必ずブロックになっている黒糖を使わなければならないのです。ちなみに、同じく砂糖を原料にしている蒸留酒、ラム酒の場合は一般的に砂糖を製造する際の副産物である廃糖蜜を使って造られます。黒糖焼酎を造る際に、廃糖蜜は許されていません(ラム酒との違いは他に麹の使用の有無が上げられます)。

写真は黒糖のブロック

この黒糖のブロックの溶かし方によっても味に違いが出るのです。山田酒造の「長雲 一番橋」というお酒は、黒糖のブロックをゆっくり溶かしていくことで、濃厚な黒糖の香りを実現させました。

写真は山田酒造「一番橋」

もちろん、その分手間が増えているので、生産量はそう増やせないということらしいのですが。

二次仕込みから貯蔵・瓶詰めまで

5、さて、黒糖のブロックを溶かした後に行うことが、いわゆる二次仕込みとよばれるものです。一次仕込みで造った醪に溶かした黒糖液を加えます。また、酒蔵によっては、醪に直接黒糖を加える場合もあるそうです。一次仕込みの醪に黒糖液を加えて10日~14日程すると、アルコール分が14度から16度程度になるそうです。殆ど、日本酒と変わらない度数になります。

写真は町田酒造の醪に黒糖液を加えている場面

6、二次仕込みの熟成もろみを蒸留機に通し、「蒸留」(注)する工程に入ります。この「蒸留」には、主に2種類があります。「常圧蒸留」と「減圧蒸留」と呼ばれる2種類です。「常圧蒸留」はいわゆる昔ながらの方法で、蒸留器内の気圧を操作することなく蒸留を行います。そのため、本格焼酎ならではの風味や、原料の香り・味が楽しめるため本格焼酎を好む方に人気です。対して、「減圧蒸留」は蒸留器内の気圧を下げて、「常圧蒸留」よりも低い沸点で気化したものを液化するので、クセのない飲み易い本格焼酎となります。初めて焼酎を飲む人等に好まれます。

写真は町田酒造の常圧蒸留器と減圧蒸留器

少々、複雑な話になりましたが、簡単に言えば、クセのある「常圧蒸留」と、クセのない「減圧蒸留」と覚えるといいでしょう。とはいえ、大半の銘柄は「常圧蒸留」ですが。

ところで、最近、「黒糖焼酎は糖分0」といったコピーをよく見かけますが、実際に、黒糖焼酎といった言葉のせいで「糖分がありそう」といったイメージが付きまといますが、蒸留する過程の中で糖分はなくなります。ゆえに、糖分0という訳です。

 

7、次に、蒸留したお酒から不純物を除去し、貯蔵する工程に入ります。黒糖焼酎造りで考えると、おそらくここが一番長い期間となるでしょう。大抵の黒糖焼酎は、1年~3年程度の熟成期間を置いて出荷されるからです。美味しいお酒には時がかかる。こと蒸留酒に関してはまさにその通りといえるのかもしれません。

写真は山田酒造のタンク貯蔵

この貯蔵に関してですが、殆どの場合貯蔵はタンクで行われています。ですが、近年ウイスキーやバーボンのように樽で貯蔵するパターンも増えつつあります。

 

この樽貯蔵をすると、樽の木の香り(殆どの場合樫樽(オーク)です)がつくため、黒糖らしい香りが一歩後ろへ下がる分、複雑でまろみのあるお酒になります。この樽貯蔵の黒糖焼酎ですが、近年増加傾向にあります。しかし、この樽貯蔵、酒税法上大きな問題を抱えているのです。

写真は弥生焼酎醸造所の樫樽

実は焼酎というお酒は余り色を付けることが許されていないのです。もちろん、本格焼酎ですから着色料をいれるなんてのは、論外です。ですが、樽で長期熟成すれば、年を経る毎にウイスキーのように茶色になっていくものです(ウイスキーも熟成する前は焼酎と同じく無色透明)。筆者自身このお話を初めて聞いた時、愕然としました。焼酎の文化発展の妨げとしか思えなかったからです。

そんな酒税法があるわけですから、近年見かけるようになった樽貯蔵の焼酎は「何年物」といった表記をあまりしないのです。大抵は長期熟成や長期貯蔵といった表記がされています。簡単に言えば、酒税法で引っかかるから色の濃いお酒に、色の薄いお酒をブレンドすることによって、色を薄めて瓶詰めしているのです。色付きの焼酎が許されていないから、です。

写真は町田酒造の「一村」焼酎ではこの色が限界とされる

2000年代に起きた、いわゆる焼酎ブームが下火になっている昨今、もう一度、焼酎ブームがくるとしたらこの色のある焼酎が解禁された時なのではないか?と筆者は考えています。ここだけの話ですが、多くの酒蔵様が樽で十年以上寝かしているお酒を瓶詰めできずに抱えているそうです。これが解禁されたとき、新たな焼酎文化が花開くのではないか。筆者はそう期待しています。

 

 

少々、盛り上がり過ぎましたので、話を戻します。

8、貯蔵された焼酎は、しかるべき時が経った後、加水などをされて瓶詰めされます。大抵の焼酎の原酒(水を加えていない焼酎)は、40度前後です。ちなみにですが、これも少々おかしな話ですが、焼酎と名乗れる度数は45度までということになっています。それ以上になると、スピリッツの扱いになるそうです。

こうして、焼酎は瓶詰めされ店頭に並び、皆様の胃の腑に落ちていく訳です。

写真は町田酒造の瓶詰めタンクでの3年貯蔵なので透明です

如何でしたでしょうか。少々、色の話で脱線が長くなってしまいましたが、今回書いたことは、筆者の偽らざる思いです。色のある焼酎が認められるようになれば、黒糖焼酎ひいては、焼酎そのものが新たなフェーズに入っていけると思っています。そんな新しい焼酎の世界を見てみたいと願わずにはおれません。

 

(注)蒸留とは、蒸気を吹き込みながら、沸騰させることにより、アルコールを中心とした成分が蒸発します。沸騰した蒸気を集め冷やしてできた液体が焼酎の原酒ということになります。この工程のことを蒸留といいます。

 

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