8月某日、奈良県は奈良市の「八木酒造」さんに訪問させて頂きました。
この「八木酒造」さんは春日大社から程近くにあり、奈良観光の際は寄ってみるのがいいでしょう。
「八木酒造」さんが日本酒を造っているのはもちろんですが、同時に梅酒やリキュール類・焼酎も造っておられる酒蔵様で、特に梅酒の「花札シリーズ」はファンも多い人気銘柄なのです。
写真は「とろとろの梅酒」
中でも、興味を惹かれるのは奈良県唯一の芋焼酎を造られていること。芋焼酎といえば、九州の南部がイメージされますが、奈良で、なのです。そんな訳で、今回は芋焼酎の話を中心に聞いて参りました。
写真は「萩に猪 芋」
元々は、清酒だけを造っていたそうですが、後継者がいなかった焼酎を造っていた酒蔵から機材を譲ってもらい、焼酎造りをスタートさたそうです。
最初は粕取り焼酎を造っていたそうですが、焼酎ブームの折に、「余った休耕地で芋を作りたいから、芋を作ったら焼酎を造ってみないか」といわれ、了承し、芋焼酎を造り始めたそう。実は、芋焼酎を造り始めた時も、問題が沢山起きたそうです。せっかく聞かせて頂いたのですが、ちょっと記事にすると拙いかもしれないので、割愛させて頂きました。
そんな形でスタートさせた奈良唯一の芋焼酎でしたが、最初の年の芋はまだよかったそうですが、元々水はけの悪い土地での芋作りだったために、徐々に芋の質も悪くなり(指程度の大きさの芋等もあったそうです)、奈良での芋焼酎造りはもう無理かなと、代表の八木氏も諦めかけていたそう。
そんな折に、奈良県の明日香村と、平群町の方から、「うちの芋で芋焼酎造ってくれないか?」というお話を頂き、明日香村産・平群町産の芋焼酎造りがスタートさせることができたとのことでした。
現在では、奈良の各地で作られた芋を使い、芋焼酎を作っているそうです。奈良の芋を使い、奈良の水を使い、奈良で造る奈良純正の芋焼酎。現在では、平群産の芋で造った芋焼酎や、明日香村の芋で造った芋焼酎と分けられているそうです。
焼酎に適したさつま芋を厳選し平群町で栽培。本格芋焼酎として仕上げました。「里の恵」の名の通り、土・気候そして人、平群の風土が生み出した一品です。陶器、硝子瓶の2種類を用意しています。(写真・文章は「平群観光ホームページ」より)
蒸留について
八木酒造の芋焼酎は減圧蒸留と常圧蒸留の二種類があり、元々は減圧蒸留のみだったそうですが、もっとクセのある焼酎をという要望が多かったそうで、常圧蒸留も導入したそうです。現在では減圧蒸留と常圧蒸留の二種類で焼酎造りを行っています。
ちなみに、減圧蒸留の蒸留器は設備を頂いた際の物。
減圧蒸留器
常圧蒸留器
「牡丹に蝶」について
右端の牡丹の画のラベル
八木酒造の梅酒は人気商品なのですが、この梅スピリッツも非常に面白いのです。
この梅スピリッツ、実は製法自体は焼酎とまったく同じなのです。
原材料は何かというと、米麹と梅酒につけていた梅によって造られた焼酎なのです。ちなみに、梅酒を漬けた後の梅の実を粉砕して蒸留しているそう。
「ん?それって梅焼酎じゃ?」と思われる方もいるかもしれませんが、原料に手が加えられている(砂糖とお酒に漬かっていた)ため、焼酎という扱いにはならないそう。
元々、この商品は梅焼酎として販売していたそうですが、役所の偉い人たちの中でも、焼酎なのかスピリッツなのかで揉め、最終的にはスピリッツということになったそうです。
ちなみに、この八木酒造、一般の方が蔵見学に行って見られる範囲は、googlemapで見ることができるそうです。つまり、バーチャル見学なんっていうのも可能です。ただ、販売されている商品を手に取り、口に入れることはできませんが・・・お手すきの際は是非!
終わりに
取材の最後の方で知ったのですが、実はこの八木酒造さんの代表 八木威樹氏は室町時代に使われていた「菩提酛」を復活させ、お酒造りに活かし研究するための組織「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」に所属されているそう。
ちなみに、「菩提酛」とは、室町時代に当時大流行した「僧坊酒」の「酛」造りを復活させ、現代風にアレンジしたものだそう。飲んでみれば、熟成酒のような深いコクが感じられるのが特徴です。
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