大正6年の創業以来、小規模ながら本格的な手造りの焼酎造りを守り続けている那須酒造場さんにお邪魔して参りました。

こだわりの手造り球磨焼酎

那須酒造場の代表銘柄といえばハイボールの記事でも紹介した「球磨の泉」(ハイボールの記事では原酒)ですが、その特徴は常圧蒸留によって造られた深いコクと米の味わいをガッツリ楽しめるところにあります。非常に焼酎らしい味わいで、焼酎が好きという方にはとても気に入られる味わいのお酒です。

「うちは、減圧蒸留のお酒も造っているのですが、メインは常圧蒸留の「球磨の泉」ですね」

現状、筆者が焼酎の酒蔵さんに話を聞いている限り、だいたいの場合、常圧蒸留と減圧蒸留(注)を造っている割合は、7対3位の割合で、減圧蒸留の方が多いかなといった印象です。

現在では、常圧蒸留の焼酎にスポットが当たりはじめていますが、それでも減圧蒸留の方が主流です。

実際問題、地酒屋さんに行って、取り扱っている焼酎を確認してみると、6割程度の焼酎が常圧蒸留のものです。ですが、スーパーやコンビニで確認すると、ほとんどのものが減圧蒸留になります。極端な焼酎ファンになると「常圧蒸留の焼酎のみが本物の焼酎だ」といった発言をされるかたもいます。現状、若者の酒離れが進むアルコール業界の中で考えれば、焼酎業界そのものの首を絞める発言としか思えませんが…。

もちろん、常圧蒸留の割合が少ないのには、減圧蒸留の方が飲みやすく軽やかな味わいだから受け入れられやすいという理由だけではありません。もう1つ、常圧蒸留の焼酎には一定の熟成期間が必要になることも、減圧蒸留が主流になっている要因だろうと思われます。

「減圧には減圧の良さがあって、清涼感を大切にするならやっぱり減圧だと思います。でも、香ばしさとか、米の味わいをガッツリ味わうのであれば、ガチンコの常圧がオススメですね。この、「球磨の泉」は最低で3年は熟成させてますしね」

筆者などは、常圧はクセが凄いと耳にしていたのですが、飲んでみると「そう?」といった感想でした。ですが、常圧の焼酎は大体の場合、熟成期間をおくため、ほとんどの場合はカドがとれて丸みのある味わいになっているのです。

「それこそ、30年前の常圧っていうのは、確かにとんでもなく臭かったんですよ。なんで、昔焼酎飲んでそれっきり、っていう人はそういうイメージを持っている人もいると思うんです。でも、うちなんかはバランスをとって豊かな味わいになるように調整してますんで、味はしっかり感じられて飲み辛さを感じないように造ってます。機械とかは殆ど使ってないので、ほぼ手作業で造ってるんですよ。昔ながら貯蔵用具とかですね、麹に関しても「蓋麹法」っていう小さな小箱にわけて、丁寧に造っていくっていう焼酎業界ではかなり珍しい技法を使っているんです。うちは仕込みも全て甕で仕込んでいて、伝統を大切にしたものづくりをしているんです」

(注) 減圧蒸留とは気圧を低くすることで、100℃より低い温度でアルコールを沸騰させて蒸留する方法を指します。低い温度で沸騰させるとクセの少ないライトな味わいの焼酎を造ることができます。常圧蒸留は昔ながらの方法で、90℃~100℃程度で沸騰させ蒸留する方法を指します。より、焼酎らしい力強い風味の焼酎を造ることが出来ます。

クラフトは新たな次元へ「TARAGIブルー」

クラフトジンやクラフトビール、場合によっては日本酒なども近年はクラフトという言葉が使われるようになりました。「クラフト」という言葉はその名の通り「手作り」といった意味を指します。

もちろん、那須酒造場はまさに「クラフト」(手作り)と呼ぶにふさわしい、人の手による丁寧な焼酎造りを行っている酒蔵さんです。ただ、本来の「クラフト」の意味で考えると、どちらかといえば、自分の手(飲み手)が入ってこそ本当の「クラフト」だろう。などとひねくれものは思うのです。

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この「TARAGIブルー」なんと、色が青色に変わるのです。バタフライピーと呼ばれるハーブを焼酎に2日~7日間程、漬けこむことで青色の焼酎が出来上がります。しかも、色を青にするバタフライピーを漬け込む作業は飲み手の仕事。まさに、本物のクラフトというわけです。梅酒を自分でクラフト(手作り)するという話はよく耳にしますが、青い焼酎を手作りするというのも非常に楽しいかもしれません。更に、「TARAGIブルー」はレモンなどの酸性の果汁を加えると紫色に変化します。見た目にも楽しいお酒なのです。

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ちなみに、バタフライピーというハーブにはアントシアニンが豊富で、美肌や頭皮、目にもよく、生活習慣病の予防にもなるといいます。非常に身体に優しいハーブなんだとか。

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ここまで書きましたが、はっきり言って、「この酒、面白いのは分かるけど・・・美味しいの?」そんな疑問が顔を出すことでしょう。筆者も、こういった文字通りの色物のお酒は味が全てだと考えています。面白いけど、美味しくはない。では意味がない。

お話を伺ってみると、どうやら減圧蒸留で造っているのだそう。当初はクラウドファンディングで募集していたそうですが、7月から販売を開始しているそうです。

取材している際にも飲ませて頂きましたが、非常に爽やかな味わいで美味しいお酒でした。ロックでそのままも悪くはないと思いますが、レモンを入れたソーダ割や、レモンにシロップをいれてソーダにするカクテルのような飲み方も面白いかもしれません。

これまで焼酎を飲んだことがない方に…

前にも書いたように、那須酒造さんの代表銘柄は、常圧蒸留の「球磨の泉」であり、本格的な味わいを楽しめるまさにTHE焼酎といったお酒です。そんな訳ですから、当然「球磨の泉」のファンは本格焼酎ファンということになります。

今回の、「TARAGIブルー」の発売に関しては、「まさか、那須酒造さんがこんなことをするなんて!」ともいわれることがあるそう。昔から那須酒造の「球磨の泉」ファンからすると、納得できない部分もあるのかもしれません。

「この商品は、ガチンコの焼酎が好きで、定期的に飲んでくれている方が対象というわけではないんです。どちらかと言えば、焼酎をまだ飲んだことがない若い人に向けて造っているんです。元々、米焼酎の減圧蒸留はクセが少ないのでカクテルのベースにしてもいいですし、ソーダ割にしてもレモンやガムシロップを入れても美味しいと思うんです。

この「TARAGIブルー」なら、柑橘類の使い方でカクテルみたいにグラスに紫と青の層を作ることも出来るんです。この前、熊本県でお酒のイベントがあったときは、自分ではちみつレモンを作ってソーダ割にして色の変化を楽しみつつ、美味しく飲めるようにしました。非常に、若い人からの評判もよかったんです」

「焼酎を飲んだことがない若い方とか、焼酎ってオジサン臭いっていうイメージを持たれている方とかに楽しんでもらえたらなと思っています。今まで、焼酎が大好きっていう人がイベントでもなんでも楽しんでいたんですけど、全然、焼酎に興味がなかった人に興味を持ってもらえたらなと思っています。

今の30代後半以降の方は、いわゆる焼酎ブームを体験している世代なので、どちらかといえばガチンコの飲み応えのある焼酎とかの方がいいと思うんです。でも、今の20代~30代前半の世代はあんまり焼酎を飲んだことのない世代なんです。アルコール離れともいわれていますし、ビールからも離れているんです。でも、RTD、チューハイや缶のカクテルなんかの売上は伸びています。このお酒(TARAGIブルー)は、焼酎を楽しむ入口にしてもらいたいお酒なんです。ライトな飲み口の爽やかな焼酎ですけど、この焼酎を入口にやがては飲み応えのあるガチンコの焼酎も楽しんでもらえるようになったらなと思っています」

確かに、筆者も今でこそ飲みごたえのある焼酎を好みますが、最初はライトな焼酎を気に入って飲んでいました。基本的に、味覚は「慣れ」だと思っていますので、飲むことが焼酎にせよ、日本酒にせよ味がわかるようになっていくと思っています。

焼酎が大好きな方は、ガチンコの球磨焼酎「球磨の泉」を、まだ焼酎を飲んだことがない方は色の変わる球磨焼酎「TARAGIブルー」を、是非お楽しみください。

注 「TARAGI ブルー」は2019年の7月に発売されたばかりで、取扱店も少ない状態です。ご購入の際は、お手数ですが、メールで問い合わせるか、電話で確認していただくのがオススメです。http://jp.kumashochu.or.jp/page0128.html

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