【酒屋へ行こう】たけくま酒店【神奈川県川崎市】につづきまして、今回は神奈川県海老名市にあります、泉橋酒造にお邪魔しました。

泉橋酒造

酒米の苗が置かれた泉橋酒造の田んぼ。あらかた田植えが済んだ頃にお邪魔しました

近年の発展著しい海老名市は、大手の映画館が2軒、さらに「ららぽーと」もできまして、平日にも関わらず多くの人々で賑わいをみせております。
私が子どもの頃はもっとのんびりした場所だったような記憶がありますが、20年ほどの間にどんどん開発が進み、マンションも増え続けています。

海老名駅から車で10分弱のところにあります泉橋酒造は、「栽培醸造蔵」として、米作りから精魂込めて酒造りを行いますから、近年の地価の上昇を鑑みるに、とても高価なお米でお酒を造っていることになりますね、とは蔵人の談。

街の発展は喜ばしいですが、田んぼも守られて欲しい、とヨソモノの私は身勝手に祈ります。

さて、この日は橋場由紀専務にお話をお聞きしました。

蔵の裏手の駐車場から、橋場専務の後をついていきます

泉橋酒造の特徴の一つは「栽培醸造蔵」であること。
「栽培醸造蔵」という言葉は泉橋酒造株式会社の登録商標でして、農業から醸造まで責任をもって酒造りを行う酒蔵を意味します。

地元の酒米業者やJA、技術センター等と協力しながら、酒米の90%以上を地元産でまかなっています(100%でないのは災害等に対するリスクヘッジ)。
酒造りのオフシーズンにお邪魔しましたが、この日も蔵人は自社の田んぼ仕事に励んでおりました。

そんなわけで、泉橋酒造にはちょっと珍しいアレがあります。

醸造用の精米機!

酒蔵は一般的に、精米済みの酒米を仕入れ、酒造りを行います。
米作りには手間を含め、多大なコストがかかりますし、品質の良いお米を育てるのは容易ではありません。

泉橋酒造がそういった苦労をおしてでも一貫した生産体制を整えたのは、じぶんたちで責任をもって安全・品質を保つため。特に自社で精米すれば、コメの品種のみならず、その年、その日の米の状態に合わせて、磨き方の調整ができることが大きなメリットになります。

ちょっとマニアックな話なので読み飛ばしていただいて構いませんが、日本全国の酒蔵の数は1400件以上あるそうですから、なかには酒米の一部自社栽培、玄米を仕入れて自社精米などなど、本当に様々な酒造りの形態があります。
そのうえで泉橋酒造の珍しいところは、生産するお酒の原料米の90%以上が地元産であり、いわば「顔」のみえる「ご近所さん」の手によるお米であることになります。
お米にかかるコストや、米ブランドの競争力が弱くなりますが、手ずから責任、安心を担っているんですね。

それではいよいよ、蔵の中の見学に移ります。

入ってすぐのところに、古くからの釜がありました。お米を蒸す設備ですが、古い釜は床に取りつけられていることがよくあります。昔は床下、半地下で火を焚き、お米を蒸したからですね。
お米を投入する際にも、持ち上げる手間が省けてGood。

貯蔵タンク、仕込みタンクのスペースです。この時期はもうお酒を保管するスペースになっていますが、ちょっと珍しいのが床のタイル。
明るい色のタイルにして、汚れを目立ちやすくさせ、清潔に気を付ける為の工夫だそうです。お酒というと、伝統もあり古い家屋で造っているイメージですが、とはいえ食品であり、口に入るものなので、衛生面に特に気を配っているんですね。

泉橋酒造には製麹室(せいきくしつ/麹室(こうじむろ))が二つあり、大量の「ふた」にはトンボが印刷されています。

「ふた」。といっても何かに蓋をするのでなく、容器のように用いる。後述

泉橋酒造では、お酒の銘柄の「とんぼ」を発売する以前から、社用のハンコにトンボを用いていたそうです。いまでは蔵の中のタンク、ふたにトンボが印刷されています。
仕事道具に自社のサインがはいっているわけですから、蔵人も仕事に気合が入るだろうと想像されます。見学に来る方も注目しますし、ロゴ印刷はおもしろいアイデアですね。

見学者向けに、製麹室での作業風景の写真がありました。「ふた」は製麹作業の中で、写真のように用います。ちなみに写真の杜氏さんは、ご高齢につき引退されたそうです。

つづいて特徴的な設備の部屋にやってまいりました。醪(もろみ)を絞る設備ですがご存知でしょうか?

槽(ふね)です。

名前の由来は船に似てるから、ということですが、この槽に袋詰めの醪(もろみ)を投入し、酒が絞られて嵩が減るにつれ、上段の木枠を外していきます。
最後にはプレスしてお酒を絞るのですが、通常の圧搾機に比べてじっくりと時間をかけてお酒を絞るため、澄んだお酒になるといわれます。

写真の左が現代の槽。もちろん泉橋酒造にも通常の圧搾機(ヤブタ)がありますが、なるべくたくさん槽絞りがしたいということで、2台用意したそうです。
醪は生き物ですので、最高の絞りどきに仕上がるタイミングにぶれがありますから、複数の醪の絞りどきが重なった場合、一台では絞り切れないことがあったそうです。

さて、スペースの関係で残念ながら一部省略いたしましたが、ひととおり見学を終え、ミーティングルームに移動します。

通常の酒蔵見学は、こちらのミーティングルームから始まるそうです。グループでも、個人でも参加が可能で、定員が24名。人気のツアーですので、大体2ヵ月間に予約するようにすると安心ですが、運が良ければ当月のキャンセルが発生する場合もあるので、公式HPよりお問い合わせください。

お土産は、施設内にあります蔵元直営店「酒友館」で購入できます。

この日は仕事をこっそりと抜け出したお客さんや、海外のお子様連れのお客さんがいらしていました

さらに、見学ツアーには泉橋直営レストラン「蔵元佳肴」(くらもとかこう)の割引サービスもセットです。「蔵元佳肴」は前日までの予約制レストランで、酒蔵直営のメリットを存分に活かしたお店になります。

今回はレストランの方にもお邪魔させてもらいました。

蔵元佳肴

海老名駅前、「ららぽーと」向いに、「蔵元佳肴」の入り口があります。路地を覗くと…

一斗瓶が照明になった通路が。

入口につきました。

酒蔵直営レストラン「蔵元佳肴」では、根本 真 料理長が泉橋酒造の酒と料理のペアリングにこだわって腕を振るいます。

根本料理長はもともと仙台でお店をやっていましたが、橋場代表が腕に惚れ込み、海老名に招いたそうです。
橋場代表が全国を営業でまわり、そのなかで一番、泉橋のお酒と相性が良い、やさしい味の料理だ!ということで、招くまでに7年間の交流があったそうです。

土地が変われば食材も変わりますので、根本料理長は仙台時代からの仕入れ先に加え、1年かけて地元食材をリサーチし、例えば地元でも作りにこだわり、しかも美味しい野菜をつくる農家たちと関係を築きました。

落ち着いた店内はゆったりとお食事が楽しめるように

お酒とお料理の相性は事前に選び抜かれ、例えば同じ銘柄でも冷なのか、燗なのか、緻密に計算された食事が楽しめます。お酒を楽しむ前提で、季節の素材が吟味され、設計されているので、メニューはコースでお任せのスタイルです。
いわば、並大抵の食通では不可能なレベルで、トータルコーディネートされたお食事が楽しめるわけですね。

お酒の量が多いと辛い方は、事前にご連絡いただいてもありがたいですし、その場で伝えていただいても調整させていただきます、とのことです。

泉橋酒造の詳細情報を見る。

泉橋酒造の販売店を探す。

「泉橋酒造株式会社」
公式HP
見学予約サイトへのリンク
神奈川県海老名市下今泉5-5-1

「蔵元佳肴」
事前予約制となりますので、ご利用の際は前日までにご連絡お願い致します。
該当HP
海老名市扇町12-33 フィールズ三幸 1階

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