今回の【酒屋へ行こう】は、東京都豊島区「地酒屋こだま」にお邪魔いたしました。

今年の夏、「千代酒造」さんにお邪魔させていただいたのに引き続き、「篠峯」を扱っている酒屋さんにインタビューできないかなということで、今回の運びとなりました。

地酒屋こだま

「地酒屋こだま」は大塚駅から徒歩3分ほどの好アクセス。取り扱い商品は日本酒のみ!

こだわりの地酒屋は数あれど、ビールすら置いていない、文字通りの地酒屋は初体験でした。地酒の取り扱いは約50蔵、250種類ということで、お店はお酒で埋め尽くされています。

お邪魔した日がたまたまお酒の届く日だったこともあり、ちょっと店内写真が見づらくてすみません。

「地酒屋こだま」はオープンしてから今年で9年目!

児玉店主にお話をお伺いしました。

いつの間にか引き込まれてしまう話術をもった御仁でしたので、話の流れを編集しつつも、対話形式でお送りします。

千代酒造との出会い

佐藤:今回は「千代酒造」の「篠峯」についてお伺いさせて頂きたいのですが、まずは出会いのきっかけを伺えますか?

児玉:僕はお店を始める前、アマチュアの立場でお酒の会を運営していたんです。最大40名の規模で、ちゃんと目配りのできるこぢんまりとした規模で、お酒を楽しむ会でした。

その会をしているうちに、酒蔵の方とも交流が増えていきまして、堺さん(※千代酒造の蔵元)と知り合ったのは今から10年前くらいになります。ある飲食店の仲間が「篠峯」の会を企画しまして、そのお手伝いをしたのが初めての出会いですね。

そのとき僕は「篠峯」というお酒を知りませんでした。当時は今みたいに酸が立ったお酒が流行ってなくて、まだまだ酸の低い酒が全盛の頃でしたから、とてもおもしろいお酒でしたね。

佐藤:12年前の「篠峯」ですか。その頃の私は未成年でしたので飲んだことがないのですが、当時から、いまと同じ方向性だったんですね。

児玉:そうですね。香りは抑えて立たせない、味も「どん」とは出さない、でも妙に酸があるという。衝撃を受けたので、いまでもどんな味わいだったかはっきり覚えています。
いまの「篠峯」は同じ路線のまま、信じられないくらい完成度が高まってますから、今から考えれば当時のものは発展途上だったわけですが、それでも既に個性的で印象深かった。
堺さんとはその後どんどん付き合いが重なりまして、お店をオープンする最初から、お酒を置かせてもらっています。

ただ実は、お店のオープン当初はあまり売れませんでした。

ワインのような、スリムな味わいに酸が立つお酒の良さを、僕があまりうまく伝えられなかったことも原因かなと思い、一生懸命勉強しました。造りも見せてもらったり、食べ合わせだったりと色々な角度から。

そうして5年位前から理解が深まってきまして、実際に売れるようになってきましたね。いまではうちの人気TOP3に入ります。ただ勉強してる間にも「篠峯」の完成度がどんどん高まっていきまして、3,4年前からはさらにぐんと美味しくなりましたから、単純にお酒の美味しさのおかげかもしれませんけどね(笑)

おすすめの「篠峯」

佐藤:つづいて、イチオシの「篠峯」銘柄について伺いたいのですが。

児玉:うちでは変わらずこの4種を置いています。あとは時期によりスポットである場合もありますが、棚の左からの4種はキープしていますね。
篠峯は非常に多くの種類が販売されていまして、1年で60~70種類ありますが、この4つが大好きなので。

児玉:このなかのどれを取り上げましょう?

佐藤:悩みますね。篠峯を飲んだことがない方向けに、入口におすすめのモノにしましょうか。

児玉:入口だと、裏篠峯がありますね。篠峯の本質に触れる前に、入りやすさを意識して造っているお酒です。篠峯だけでなく、日本酒の初心者の方でも楽しめるようになっていますから、これをおススメするのも一つの手です。

ただ名前が裏ラベル、ロゴが通常のものと異なっているところにも表れていますが、難しい点も2つあります。
1つはもちろん篠峯らしさが控えめになります。
もう1つは特約店のなかでも、篠峯の、篠峯らしさをよく理解しているお店だけの取り扱いなので、取り扱いがあるお店をチェックしないといけないですね。

佐藤:なるほど。ところで、具体的にはどのあたりが初心者向けであり、篠峯らしくないのでしょうか?

児玉:香りですね。
千代酒造さんで、いま人気があるお酒の造り方に挑戦したところ、とても美味しくできたんですね。

佐藤:おお。成功したんですね。

児玉:そうなんですよ。ただ美味しいんだけど、香りが豊かなだけでなくて、香りの質が異なりまして。篠峯らしさが減っちゃったね、ということで「裏」に。

佐藤:では日本酒が苦手でなければ、いきなり通常ラベルの銘柄をいただくのが良いかもしれませんね。

取材中、お客さんが「篠峯 純米超辛無濾過生原酒」お買い上げ。ホントに人気。

児玉:4種類のお酒が大好きでいつも置いているとお話ししましたが、実は他にも意図がありまして。こちらは全部生酒で、米が山田錦で同じ。精米歩合もほとんど同じです。
造りの違いが判りますから、どの種類から入っても、飲み比べて楽しめるんですね。酵母の違い、通常の造りと生酛の違いがよく分かります。

それぞれ相性のいい食事も微妙に異なりまして、同じ素材でもちょっとした調理法の違いとか、調味料の使い方とかも変わってくるので、そのあたりは実際にお店でもご紹介しています。

佐藤:なるほど。

児玉:あとはそうですね、篠峯の生酒はどれもガスが残っています。微発泡でシュワっとしているんですね。このガスを残す工夫は酒蔵によって様々ですが、千代酒造ではお酒を絞るときに、「搾ったお酒にできるだけ負荷を掛けずに移動させる工夫」をして瓶に詰めるようにしています。高いところからお酒が落下しないように、とかね。
ガスがあるおかげで、軽さのある酒質になっているんですよ。

佐藤:いままで微発泡だなとは思っていましたが、飲みやすくなる効果は気づきませんでしたね。美味しいなーと、ただただ飲んでました。反省ですね。

児玉:さて、こんなご紹介でどうでしょうか。普通の辛口とはまた違う、良さのあるお酒なんですけど、魅力はうまく伝えられたかな?頑張って紹介してね。

佐藤:が、頑張ります。

こぼれ話

佐藤:本日はお忙しいところありがとうございました。最後にちょっと気になった張り紙があるのですが……。

佐藤:「地酒屋こだま」では試飲もできて、お酒選びが楽しいという評判をみかけていたのですが、食べ合わせまで研究されているんですね。

児玉:もちろん、精密で緻密な相性を見極める腕は料理屋さんには適いませんが、うちに置いている全てのお酒に対して、それぞれどんな食事が合うかは把握しています。

佐藤:恐ろしいワザですね。

児玉:数をこなせばできるようになりますよ(笑)
あと評判でいうと、うちほど狭い酒屋もなかなかなくて、引っ越したいんですけどね。なかなか良いところもないしなあ……。

佐藤:陳列棚だけでなく、保管用の冷蔵庫にも凄い量のお酒がありますよね。

児玉:これはお酒の飲みごろまで、わざと寝かせているものもあったりしますからね。

佐藤:こだわりですね。

児玉:天邪鬼な人間なもので。

杉玉より高い酒ケース。カーテン裏の大型冷蔵庫もぎっしり詰まっていた。

さて、いかがでしたでしょうか?

天邪鬼を自認する児玉店主ですが、お話の端々から、より良いお酒を提供すること、もっといえば、お酒に関わる造り手、飲み手をハッピーにするためにどうするべきか、非常に考え抜かれていることがうかがえました。

スタッフのこーへー氏も非常に爽やかで、日本酒ファンの強い味方になってくれる酒屋です。特に日本酒ビギナーの方に、ぜひ一度足を運んでみて欲しいお店です。

地酒屋こだまの取扱銘柄や詳細情報を知る。

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