【酒蔵へ行こう】 「西平酒造」 ミュージシャンの樫樽酒

奄美大島は「西平酒造」さんにお邪魔して参りました。

 

西平酒造について

 

「西平酒造」は、初代・西平守俊(もりとし)氏が、昭和2(1927)年、喜界島にて創業したのがその歴史の始まり。

 

妻のトミ氏が初代杜氏となり、泡盛の酒造場として事業を始めた。

太平洋戦争中の空襲で蔵が消失し、終戦の翌年に奄美大島の現在地へ移転。戦中戦後に泡盛の原料となる米が極度に不足したことから地元で手に入る黒糖を使用して焼酎を造るようになり、現在の形に至っている。

 

戦後の物資難から黒糖焼酎を、という流れはまさに黒糖焼酎の歴史そのものとも言える。非常に歴史の長い蔵といえるだろう。

 

そしてこの、「西平酒造」さん、最近はよく見かけるようになったが、女性杜氏が活躍する蔵でもある。日本酒などでは、まだまだ珍しいともいえるが、実は泡盛ではそう珍しいことではない。

 

黒糖焼酎はそもそも、泡盛の影響が強い酒だ。

 

そして、実は泡盛の杜氏は女性が一般的とされている。ゆえに、西平酒造の初代杜氏も西平トミ氏が行っていたのだ。

「男は夜、飲みに行って帰ってこないから、酒造りには向いていない」

初代杜氏トミ氏の言葉である。トミ氏の孫にあたる現代表の西平功氏がそう話してくれた。

その話を聞いた時、失礼ながら筆者は大爆笑してしまった。

 

トミ氏の酒造りについて更に西平功氏に伺ってみた。

「非常に肌感覚というか、そういったものを大事にしていた人でした。布団に入っていて少し肌寒いと思ったら、そのまま蔵に行って、温めたり。お酒造りに関しては、凄く丁寧だった記憶がありますね」

 

正直に言えば、そういった、粘り強さのような強さは、男性より女性の方が強く感じられると筆者も考えていたので、酒造りに女性が向いてないという事実はないのだろう。

 

さて、なぜこんな話をしたかといえば、実はこの「西平酒造」、現在若手の女性杜氏(トミ氏の曾孫にあたる)が活躍している酒蔵だからだ。

左 杜氏 西平せれな氏  右 せれな氏の父であり現代表の西平功氏

西平せれな氏は2015年9月から蔵の仕事を手伝い始め、去年から杜氏として本格的に酒造りに関わりはじめた。

 

実は、せれな氏は元々東京で音楽活動をしているミュージシャンだったという。ミュージシャンから杜氏へ。そして、現在もミュージシャンとしての活動は続けているらしい。

 

「最初は大変でした」

せれな氏は笑いながら仰る。さもありなんと思う。

 

映画のような話だが、残念ながら筆者、音楽は門外漢なので余り触れずにお酒の話に戻したい。気になる方は、Youtube、Wikipediaをご覧ください。

 

「加那」について

 

写真は加那 40度

「愛しい人」という意味を持つ「加那」。香りはバニラのように華やかで、味は焼酎とは思えない程、円みがある。樫樽で一年以上寝かせた酒をブレンドして瓶詰めしているそうだ(ブレンドが必要な理由は焼酎の色が理由である。詳しくは「黒糖焼酎って何?」をご覧ください)。

 

近年増える傾向にある黒糖焼酎の樽貯蔵。代表の西平功氏によれば、実は、初めて行ったのはこの西平酒造なのだという。

最初に行ったというのは、なかなかの勇気がいる行為だったのではないかと思う。

 

せれな氏にオススメの飲み方を伺ってみると、ストレートと仰る。ストレートにチェイサーを付けて、ちびちび飲むのがいいという。

「そんなにたくさんは飲めないけど」

と仰り、

「こういう飲み方をするようになったのは、自分で造るようになってから」そう話す。

 

酒造りには他にどんな楽しみがあるのか、そんな話を聞いてみると、「ハナタレ」(蒸留した際に最初に出てくるアルコール)を飲むのが楽しみだと仰る。

 

焼酎には、45度の度数を超えてはいけないというルールが有る。通常の黒糖焼酎の原酒(加水していない状態)は、40度辺りの度数である。とはいえ、ハナタレは通常の原酒より度数が高くなる。だいたい、60度前後とのことだった。

 

「ハナタレになると、度数が高すぎて、焼酎としては瓶詰めすることも、提供することもできないんです。でも、私たちは酒質を見ないといけないので、味見するんです。お酒造りの一種のご褒美ですよね」

 

そんな実に羨ましい話をされた。

日本酒でもそうだが、本当にしぼりたて、出来立ての酒を飲めるのはやはり蔵で働く一種の「ご褒美」といえるだろう。

 

最後に、そんな西平酒造のオススメのお酒を1本紹介して終わりたいと思う。

 

珊瑚 新酒2018

「珊瑚 新酒2018」は、名前の通り新酒である。西平酒造の黒糖焼酎の銘柄は主に二種類があり、前述した樫樽(ホワイトオーク)で一年以上寝かせた「加那」。そして、タンクで一年以上寝かせた「珊瑚」の二種類だ。

共に、一年以上寝かせているのだが、この「珊瑚 新酒2018」は言わば出来立て、生まれたての赤ちゃんなのだ。

このお酒は、西平せれな氏が杜氏になった去年から販売されるようになった商品だ。いわば、杜氏としてのせれな氏と同じく、産声を上げたばかりの酒ともいえる。

 

どこか鮮烈で、これからどう成長していくのだろうかと思わせる、そんな未来を想像させる酒だ。

 

まずは、樫樽の「加那」や、タンクで1年貯蔵した「珊瑚」を楽しんで頂きたいと思うが、もし「加那」「珊瑚」を飲んで、気に入って頂けたなら是非この「珊瑚 新酒2018」を楽しんで頂けたらと思う。

 

「珊瑚 新酒2018」を飲んだ後に、「珊瑚」を飲み、1年の変化を楽しむのもいいだろう。また、「加那」を飲んで樫樽でこんなに変わるのかという変化を楽しんでみるのもいい。そんな、これまでの焼酎とは少し違う楽しみ方ができる生まれたてのお酒である。

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