【酒蔵へ行こう】追跡!長野の酒メッセ(前編)【水尾/北光正宗/女鳥羽の泉】

去る2018年5月9日「長野の酒メッセin東京」にお邪魔しました。

「アルクマ」はアルプスのクマであり、歩くクマ。アルコールのクマではない

「長野の酒メッセ」は、長野県の酒蔵62蔵が一堂に集う大きなイベントで、毎年大阪、東京の2会場で開催されています。入場料に関しても、今回は2,000円とお得です。2部制に分かれておりまして、1部は酒類業関係対象で、2部が一般の方向けになります。

1部が終わり、2部に向けての準備中

1部にも本当にたくさんの方が来場しており、近年の長野の酒の盛り上がりを目の当たりにしました。

開会の挨拶。多くの来場者で賑わっています

会場入口にて、キレイな試飲用のグラスが配られ、飲み放題の形式になっています。

なかには愛用の酒器を持ち込む猛者も

私はもともと、この会場にて長野のお酒について取材するぞー、と意気込んで参加したのですが、開会してすぐに断念。せっかく集まってくださる酒蔵様、来場者の方々にご迷惑をお掛けするわけにはいかぬ、と、酒蔵様への簡単な挨拶と、後日の出張に方針を転換しました。

そうだ 長野、行こう。

(以降の記事は、時系列、取材内容を読みやすく再構成してお届けします)

 

長野県の酒蔵は大きく4つの地域に分けられ、まずは北部のエリア(中野、北長野、長野)に向かいます。
JR大宮駅から新幹線に乗りまして、飯山駅へ。北陸新幹線が金沢駅まで開通したおかげで、ずいぶんアクセスが楽になりました。飯山駅から15分ほど歩くと目的地に到着です。

田中屋酒造店

長野出張のトップバッターは飯山市にあります田中屋酒造店
酒メッセでの写真はこちら。

田中社長にお話をうかがいました。

―長野県のお酒の特徴について

長野県全体の傾向については、なんとも言えませんね。様々ですから(笑)。
強いて言えば、普段食べてる野菜にあわせて、例えば野沢菜に合う酒、という傾向があるような。特に長野の北の方はそうですね。

―飯山のお酒について

このあたりは米が良い地域で、食用米コシヒカリも特A規格(最高評価)が取れますね。一般の方の認知度はいまいちかもしれませんが、お米のコンテストというのがありまして、最高の評価は4,000件のうち、40件が受賞します。
新酒鑑評会よりよっぽど厳しいですよね(笑)。

連続受賞等、条件を満たすと殿堂入りになりますが、日本全体の5,6件が殿堂入りしているうち、2件がこの地域になります。

そんなわけで、食用米に限らず、酒米もやっぱり品質が良いですよ。近所で、ひとごこち、金門錦をつくってまして、特に金紋錦はたくさん作っていますね。

田中屋酒造店のご近所にある酒米の水田。品種は「ひとごこち」

―おすすめの銘柄について

7号酵母の泡ありのもので造っている、純米大吟醸と、純米吟醸かな(泡ありの酵母は現在主流ではない)。どちらも金紋錦仕込みです。

純米大吟醸 水尾

私は伝統には革新が欠かせないと考えていまして、昔からあるもののうち、良いものを積み上げていかなければならないと。
泡ありの酵母は、タンクで膨らんで大変なこともありますが、ウチの場合は過去からのデータの蓄積もありますし、なにより上手くできるので残しています。

結果として、造りのなかで残るものと変わるものとありますが、100年、200年先へ続いていく、お客さんが喜び続けてくれるというのが本質だと考えて取り組んでいきたい。

変わり種日本酒もおもしろいんですけどね(笑)。

純米吟醸 水尾

目指すお酒としては、旨さが残るもの。にがさ、しぶさに感じるものを丸くして、旨味として残る酒ですね。
金門錦はビターな感じというか、にごりがあるので、それを良さに変えて、他のお米では出せない味を目指します。
例えば、個性派の役者さんには崩れたところがあって、それが味になるでしょう?綺麗な役者さんもいいけども、そういうお酒を目指したいんですよ。

田中社長、ありがとうございました。

最初はお茶をいただきながらインタビューさせて頂いていたのですが、途中からお酒に代わっておりました。

口に含むと穀類の旨味、複雑さがありながらも重さはなく、飲み込むときには澄んだ印象を残します。あれ?さっきの美味しさの正体は何だろう?とさらにもう一口。飲み飽きのしないお酒でした。

この後の予定を田中社長にお話しすると、途中に酒米の田んぼ(記事中の写真のところ)があるし、送っていくよ。ということで甘えさせていただきました。

重ね重ねありがとうございます。

角口酒造店

田中屋酒造店から車で10分ほど。「角口酒造店」にやってきました。

田中屋酒造店とは飯山市内のご近所さんで、田中社長も、「角口さんは土地が大きくてうらやましいよねえ」と笑いながらお話しされる通り、写真の建屋の周囲にも、倉庫などがみられます。

長野の酒メッセでの一枚
明治2年、村松彦三郎氏が創業しました。この書は仏壇から発見されたとのこと

専務取締役 兼 杜氏の村松裕也さんにお話をうかがいました。

―長野県のお酒のイメージについて

長野県は米の味わいを活かした、ボリュームのある旨口のお酒が全体的に多いかな?新潟の淡麗辛口とは対照的ですね。
角口酒造店のある飯山地域は例外的に辛い酒を造ります。キレの良い酒、と言ったほうが的確かもしれませんね。
弊社も基本的には全部ドライでキレの良い酒です。

いまでこそ流通がしっかりしていますが、昔は、雪に閉ざされる地域でモノが入ってこないので、塩の利いた保存食とあわせて飲み飽きない酒が求められていたのが背景にあると思います。

―現在の酒造り、県内での技術交流について

長野市以北の地域では飯山醸友会に所属する杜氏・蔵人が多いですね。
私も飯山醸友会所属の飯山杜氏になります。
ただ、飯山杜氏だけが持つ特別なワザがあるというわけではないです。長野市以北という、冬季は降雪のある地域での寒さを前提とした酒造りという部分で、共通の製造方法や設備などは特徴として現れるのではないかと思います。

長野県は広いので飯山杜氏以外の県内での技術交流という意味では、前提の環境が全く違ってくるので勉強になりますね。
あんまり暖かい地域での酒造りということになると、違いが大きくなって製造方法や設備面も変わってきます。

―角口酒造店のお酒を初めて飲む人に、一銘柄おススメするとしたら

「北光正宗 金紋錦 純米吟醸」ですね。

華やかな香りがあり、甘さを感じながらも軽い酒質で、わかりやすくバランスを取っている純米吟醸です。

飯山エリアの普段の晩酌用にはドライなお酒のほうが相性が良いと考えています。飯山市は長野県なので当然海がありません。でも季節ごとに山菜や野菜が大量に手に入る地域です。
山菜や野菜が持っている苦味やえぐ味、渋味といったネガティブな味わいをドライな酒で「切って」飲み込む、という食環境が根底にあるためだと考えています。

“北光正宗”+“山菜や野菜”は非常に相性の良い組み合わせだと思います。

―ラベルがとてもキレイですね

北光正宗は統一感のあるカラー、ラベルのデザインをしてまして、中身と外見とが連動するよう心掛けています。クリアな酒だから、クリアなラベルを基本にしてあります。
クリアさにこだわるのは、酒飲みのための酒というか、飲み飽きせず、「1杯飲むための酒」では無く「1本飲むための酒」を目指して製造しているためです。

この飯山という地域に根付いた食文化を柱として、より高品質な酒を製造するために、製造の全ての工程でクリアさを大事に仕上げています。

村松専務、ありがとうございました。

私も後日、実際に「北光正宗 金紋錦 純米吟醸」をいただきましたが、贈り物としても活躍するような高級感のある味わいでした。甘みがあり、香りもキレも良いお酒でありながら、なにより個性的なのは辛さ。
このお酒は本当に辛口です。野菜のえぐみ、しぶみを「切る」チカラがあるのはもちろん、口当たりの甘みや美味しいふくらみが後を引きすぎないように、辛みが口中をリセットします。どんどん飲めそうですが、上品なお酒を一晩で空けるのか、という葛藤に苛まれます。結局飲みきってしまいましたけども。

さて、この後は松本市に一泊しまして、長野県の西エリア(北安曇、松本、木曽)の酒蔵に向かいます。

善哉酒造

おはようございます。松本城です

松本城より、徒歩10分。松本市の観光地のなかに「善哉酒造」があります。

酒造と、直販店の表には、酒造りにもつかわれる、キレイでおいしい地下水が湧いています。

女鳥羽の泉は地元の方が頻繁に汲みに訪れる美味しい水。コーヒーや、お茶を淹れると澄んですっきりした味わいになるそうです

根岸則夫 杜氏にお話をうかがいました。

―松本のお酒について

水が良いですね。量が豊富ですし、ちょっと誇張になっちゃいますが、どこを掘っても水が出るような感覚があります。一帯の水は「信州松本城下町湧水群」と呼ばれまして、平成の名水百選に選ばれています。

感覚としては柔らかい水で、成分的に軟水というわけではないのですが、お酒の仕上がりが澄んだ、さらりと飲めるものになりますね。

―伝統的なお酒と、いまイチオシのお酒について

伝統的なものは上撰善哉ですね。

ただ、伝統的という意味では造りが変わったところがありまして、ずっと昔につかっていた井戸と、いまの井戸は違う位置にあります。30メートルほど掘ったところで一番良い質の水が出るのですが、掘る場所はもちろん、深さによっても、かなり水の様相が異なります。

イチオシのお酒はこちらの「純米吟醸 女鳥羽の泉」ですね。

いまつかっている水の名前が女鳥羽の泉といいまして、その名前を取っています。おすすめの理由は、飲みやすく、キレイな酒質で……、うーん、実際に飲んでみましょうか。

女鳥羽の泉をそそぐ根岸杜氏。場所は直販所

実際に飲んでみると、確かに澄んだお酒で、さらりと飲めます。気づくと空っぽになってしまうような軽やかなお酒です。淡麗な印象ですね。

根岸杜氏ありがとうございました。

余談になりますが、酒蔵のすぐ隣に、今回お邪魔した直売店がありまして、普段は女将さんが店番をされています。この日も常連さんと色々お話をされていまして、良い意味で酒蔵らしくない、気やすい雰囲気が印象的でした。

善哉酒造は、信州SAKEカントリーツーリズムに参加され、試飲、見学(事前にご連絡ください)も対応していますので、酒蔵に興味はあるけれど、ちょっと尻込みしてしまうような方にもおすすめですね。

もっとも、今回お邪魔させて頂きました長野県の酒蔵様はみなさんとても親切で、長野県への親しみがぐっと増した一週間でした。

 

さて、「追跡!長野の酒メッセ」(前編)は以上になります。

次回は長野県の東のエリア(上田エリア、佐久エリア)にお邪魔します。

お楽しみに!

Facebooktwitter

user's comment みんなのコメント

あなたも投稿してみませんか

コメントを投稿するにはログインしてください。

Feature イチオシのお酒を見る